北中康文 写真 斎藤眞・下司信夫・渡辺真人 解説 / 新書判 / 288ページ
ISBN 978-4-8299-8800-8 2012年3月3日発売
定価2,640円(本体2,400円+10%税)
毎日新聞 2012年8月5日(日) 東京朝刊12面「今週の本棚」
世界遺産の知床半島から沖縄の万座毛、玉泉洞まで、日本のいたるところに不思議な自然の造形物が存在する。地球の営みが造り出した奇勝、景勝の数々——。しかし、その成り立ちを知っているのと知らないのとでは、実物を見ても大違い。
知床は、カムチャッカ半島に連なる千島火山帯の一部。羅臼岳や知床硫黄山など、新しい火山帯の活動が生み出した秘境だ。摩天崖やローソク岩といった奇勝が点在する島根県隠岐諸島は、ユーラシア大陸の“大きな破片”に火山が噴出したもの。
兵庫県豊岡市の玄武洞や佐賀県唐津市の七ツ釜で見られる柱状節理は溶岩が冷え固まったものだが、自然物とは思えないほどの見事な六角柱が、びっしりと並んでいる。
不思議な地形は都会にも。例えば、関東ローム層に覆われた武蔵野台地と低地を隔てる山の手崖線。JR山手線・京浜東北線に沿い、東京スカイツリーからもよく見える。
「列島自然めぐり」シリーズの一冊。豊富な写真と解説を備えながらコンパクトなサイズがうれしい。この夏、山や海を旅するなら、ぜひリュックに入れて出かけたい。必ず新しい発見があるはずだ。(卓)